繊細な口当たりを楽しむ、厚さ1mmの有田焼。
佐賀で生まれた有田焼のうすはり磁器
器に詳しい人でなくても、有田焼という名前は聞いたことがあると思います。有田焼とは佐賀県とその周辺地域でつくられる磁器を指し、さまざまな窯元が存在します。有田焼の「エッグシェル」シリーズもまた個性的な有田焼の一つ。まるで卵の殻のように薄くなめらかな手触りと、透き通るほどの白さ、磁器の丈夫さを併せ持つその魅力に迫ってみましょう。
日本の磁器のはじまり、有田焼のいろは。
陶器と磁器の違いとは?
私達が普段使っている食器は大半が陶磁器と呼ばれ、ひとくくりで「やきもの」とされ、原料と製法によって「陶器」と「磁器」に分けられます。まず最も大きな違いがその原料。陶器は「陶土」という粘土からつくられ、磁器は「陶石」という石を砕いた粉が主な原料です。陶土は粒子が粗めで水分を吸うため、陶器を使用する時はしみやカビへの配慮が必要になります。一方、磁器はガラス質を多く含んだ粒子の細かい陶石が原料で、砕いたその粉を練り合わせて焼きあげます。陶器は比較的厚手で温かみのある素材感が魅力で、磁器は薄手で繊細な見た目に反して耐久性があり、取り扱いが簡単なのが魅力です。器のふちを指で弾いたときに、金属のような高い音が出るのも磁器の特長の一つです。
次の大きな違いが作り方です。その特徴として挙げられるのが「焼成温度」。磁器は焼き物の中で最も高温の約1200度から1400度で焼成される一方、陶器は約800度から1250度。焼成温度の違いは主成分となる陶土と陶石で耐火性が大きく異なるためで、磁器が陶器よりも丈夫なのは、この高温焼成が一因です。ほのぼのとした手作り感が魅力の陶器と、洗練された美しさと機能性を併せ持つ磁器、それぞれの特徴はこれらの違いから生まれています。
日本初の磁器の誕生
焼き物にはまず良質な原料があることが大前提。古くから、焼き物に適した原料が見つかった土地に窯がつくられるため、原料の産地の特徴がやきものの個性としてあらわれてきました。多くのやきものは産地名に由来して「◯◯焼」と呼ばれ、日本全国に点在しています。岐阜県の美濃焼、愛知県の瀬戸焼、長崎県の波佐見焼、石川県の九谷焼、滋賀県の信楽焼、栃木県の益子焼、そして佐賀県の有田焼・唐津焼。その他にも様々なやきものがあり、その地の特色や歴史を紐解いていくのも、やきものの楽しみ方の一つです。
そんな中、日本で初めてつくられた磁器、それが有田焼です。有田焼とは佐賀県有田町とその周辺地域で作られる磁器を指し、佐賀県=焼き物のイメージを高めています。有田焼が生産される以前の国内では陶器の生産が主となっていたのですが、豊臣秀吉の朝鮮出兵の時に日本に連れてこられた李参平という朝鮮の陶工が、有田の泉山で磁器の原料となる白磁鉱を発見したことで、日本最初の磁器が佐賀県から誕生することになりました。磁器の技術は有田から全国へと広がったため、佐賀県は「日本の磁器のふるさと」とも呼ばれています。現在、有田焼以外の磁器の産地として知られるのは、波佐見、京都、美濃、瀬戸、九谷などがあります。
伊万里焼と有田焼
その後、食器や美術工芸品を中心としたものづくりを続けた有田焼は、日本だけでなく海外でも名を馳せることになりました。江戸時代に有田で焼かれた磁器は、伊万里の港から輸出されたため、「伊万里焼」という名で普及していきます。しかし明治時代以降になると生産地の名前をとって「有田焼」と呼ばれるようになりました。骨董品などで使われることのある古伊万里は、江戸時代につくられた伊万里焼のことです。そして現在では伊万里市の大川内山で作られるものが伊万里焼と呼ばれています。
有田焼の三様式とは?
そのガラスのように透き通る白磁の美しさと磁肌のなめらかさが、有田焼の繊細で華やかな絵付を映えさせます。有田焼はその絵付け模様の特徴から「古伊万里様式」「柿右衛門様式」「鍋島藩窯様式」の3つに分けられ、「有田焼の三様式」と呼ばれています。
まず1つが古伊万里様式。江戸時代につくられたもので、染付した上に、金襴手という金色の絵の具などを贅沢につかった様式のことで、華やかさが印象的です。
2つめは柿右衛門様式。「濁手」と呼ばれる暖かみのある乳白色の余白を活かした、繊細で色鮮やかな絵付けが特徴です。主に赤・黄・緑・青を用いた色使いと繊細な線で、花鳥風月を左右非対称で表現する様式を指します。有田の地で活躍した酒井田柿右衛門が考案したもので、海外の貴族などに向けて輸出されることが多く、数多くの作品がヨーロッパに渡りました。世界的に有名なドイツのマイセン窯も、この柿右衛門様式の有田焼の模倣品がたくさんつくられていたそうです。
3つめは鍋島様式です。これは庶民向けのものではなく、鍋島藩直営の御用窯で諸大名への献上品としてつくられていたものでした。青みがかった白い地肌やくし高台、規則正しく描かれた裏文様などが特徴で、佐賀藩主が使う食器や、諸大名、幕府への献上品などとして用いられる、格調高いものもあったそうです。
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まるで卵の殻、光が透ける有田焼。
独自の技で蘇った、唯一無二の有田焼
佐賀の有田焼とひとくくりで言っても様々な窯元があります。有田焼の窯元・やま平窯は、古くから業務用食器に特化してきた窯元で、独自の技法を生かした器づくりを得意としています。プロが使う業務用食器では、複雑なデザインや用途に機能性、豊富なバリエーションが求められることも多く、そこで培われた技術を存分に生かした器は、美しいだけでなく、一見して分からない細部にまでこだわりぬいた丁寧な手仕事が魅力。そんなやま平窯の技術が集結したのが有田焼の「エッグシェル」シリーズです。まるで卵の殻のように薄くなめらかな手触りと、透き通るほどの白さ、磁器の丈夫さを併せ持つ、やま平窯の職人の技が生み出す唯一無二の逸品です。
エッグシェルの原型である「卵殻手」と呼ばれる磁器は、江戸時代から明治にかけて輸出用食器として作られました。高い技術力が必要な手法であったことから、幻の器とも呼ばれるようになりました。やま平窯では研究を重ね独自の技法で卵殻手の技術を再現することに成功。光を透かす陶土を、釉薬をかけずに焼くことで、厚さ1mmにも満たない薄くて軽い器を完成させました。ガラス質を多く含む陶土は、一般的な陶土よりも粒子が細かいのが特徴。その薄さは光にかざすと、ワインやビールなどの色のある飲み物はもちろん、色の違いが繊細な日本酒や、水や氷の影も透けて見えるほどです。主張をし過ぎない控えめなフォルムは、和食でも洋食でも食卓を違和感なく彩ることができます。
薄くて繊細な器は取り扱いに気を使うことも多く、買ったのはいいけれど気づけば使用頻度が減り棚の奥で眠ってしまう…なんてことも。陶器や磁器は食洗機使用不可のものが多い中、やま平窯のエッグシェルシリーズは手入れも簡単で、食洗器で気軽に洗える使い勝手の良さから、普段づかいにもぴったり。長年プロの要求に応えてきた職人の技だからこそ生み出せた「繊細なのに気兼ねなく使えるうすはりの有田焼き」なのです。
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ビールもワインも日本酒もうすはり磁器で。
うすはり磁器で楽しむお酒
やま平窯のエッグシェルシリーズには様々な形があり、何を飲むかに合わせて好きな形を選べるのも楽しみの一つです。手や口でふれたときの、ふんわりと花びらのように薄く軽い質感はエッグシェルならでは。飲み物を飲む時の口当たりも他のグラスとは一味違っています。様々な型と、器に合ったおすすめの飲み物をご紹介します。
まずは万能「タンブラー」。コーヒーやお茶、ジュースからお酒まで、なんにでもつかえるシンプルな形です。次にビールにぴったりの「ピルスナー」。薄い口当たりがのどごしの邪魔をせず、薄く色が透けるエッグシェルではビールの色の違いもしっかり楽しむことができます。さらにシャンパンやワインを楽しむためのシリーズも。ワインやシャンパンはガラスのグラス以外で飲む機会がなかなか少ないのではないでしょうか?ぜひ少し違った味わいを感じてみてください。他にも、日本酒を楽しむためのぐい呑や酒器シリーズ、カフェオレボウルからカップ&ソーサーまで、あらゆる飲み物をエッグシェルで楽しんでいただくべく、ラインナップが充実しています。
飲むものをイメージしやすい名前がつけられるエッグシェルシリーズの中で、ひと味違うのが「Kaori」というシリーズです。ワイングラスのように少しすぼめた口と、ふっくらと丸みをおびたフォルムで、香りが立ちやすいように計算されたKaoriシリーズは、エッグシェルの中でも人気の高い定番。口元の仕上げに、職人がひとつひとつ丁寧に金を巻くというこだわりっぷりです。シンプルだけどコロンと愛らしい形は、贈り物にもぴったり。お茶やワイン、果実酒、ウィスキーなど、香りを楽しみたい飲み物に合わせてみるのもおすすめです。そしてエッグシェルのもう一つの魅力が、これだけ繊細な美しさをもちながらも、食洗機でも使える使い勝手のよさ。飲み物用のグラスだけでなく、お皿や花器などもあり、食卓をまるごとエッグシェルで彩ってみるのはいかがでしょうか。